ブックタイトルちびっこぷれす Chibikko press 2014年1月号 NO.176

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概要

ちびっこぷれす Chibikko press 2014年1月号 NO.176

13賞する前に講演をしてもらいました。あれも最初で最後でしょうね。編 印象に残っている作家さんは?雨宮 みんなです! 共通しているのは、どこかに子どもっぽさを残しているところかな。自分が若い頃にたくさんの人に助けられたからと、あえて若い作家とコラボして絵本を作る内田麟太郎さんの人間性を知ることができたのもよかった。盲目の絵本作家のエムナマエさんが描いた絵が、多くの傷ついた人に元気を与えるのを目の前で見たのも貴重な経験です。そういうすべてが私の宝物です。いずれ呼びたいなと思っているのは雨宮尚子さん。彼女はあの時、私とやなせさんをつなげてくれた笛吹市出身のアシスタントで、今は絵本作家になっているんです。編 『旅館すずめや』の作者ですね。子どもはちゃんとわかってる雨宮 私が小学生に『チリンのすず』を読んだ時、彼らは読み終わってからもシーンとしていました。あの物語は読み手に課題を残すような終わり方でしょ。編 単純に善と悪を分けるような物語でもありませんね。雨宮 子どもたちが、彼らなりに深く感じ入っているのがわかりました。やなせさんが作品に込めたメッセージって、ちゃんと子どもにも伝わるんですよ。編 初期のアンパンマンも大人には不評だったけど、実は子どもたちにはすごい人気だったんですよね。雨宮 そうそう。子どもはわかっていた。いい絵本、悪い絵本と、大人が決めてはダメですよ。出版当初のアンパンマンは全然スマートじゃなくて、ヒーローっぽくもないんだけど、なぜか小さな子どもたちは大好き。すよね?雨宮 「雨宮さん、ボクはここが気に入ったよ」とか言って、やっぱりノーギャラで。しかも歌い手さんも楽器を演奏する人もポスターもむこうで用意してくださいました。当日はやなせさん本人もたくさん歌ってくれて、楽しかったですよ。さらに驚くことに「ここに誘致してくれたらアンパンマンミュージアムを建てたい」って言うんですよ!編 山梨にアンパンマンミュージアム!雨宮 すごいでしょ。当時の石和町の上役の方々、やなせさん本人はもちろん、サンリオやフレーベル館のえらい人たちが集まって協議したんですが、結局は実現しませんでした。どこでどうダメになったのか、当時の私には聞かせてもらえなかったんですけど…。やなせさんの後継者たち編 図書館に絵本作家を招くのは、当時の石和図書館が先駆者だったんですか?雨宮 私自身は単純に好きな作家さんの話が聞きたいって、ただそれだけでした。黒井健さんやエムナマエさんは、やなせさんが編集長をしていた雑誌「詩とメルヘン」から育った人で、やなせさんの後継者と言うべき作家さんですが、それもただ好きだからという理由で呼んだだけです。振り返ってみると、たくさんの作家さんに来ていただいて、今も仲よくさせていただいています。五味太郎さん、長谷川義史さん、きむらゆういちさん…。まだ今ほど有名じゃなかった頃の島田ゆかさんは、人前でしゃべるのが嫌いというので、私が質問者になってトークショーをしたんですが、あんなこと二度とできない。絵本作家じゃないけど、笛吹市出身の辻村深月さんには直木賞を受編 なぜだと思います?雨宮 ばいきんまんっていつも悪いことして、アンパンマンにやっつけられてるけど、なぜか憎めない。あの関係って子どもたちに似ていますよね。ケンカして「嫌い!」とか言っていた子同士が、次の瞬間にはもう一緒に遊んでいる。そんなところを子どもは自分たちと同じみたいだと感じているのかな?…なんていうのは大人の分析で、子どもは理屈じゃなくあの魅力を感じているのかもしれませんね。子どもって、何を見てるか、何を考えているかよくわからない。けどきっと何かを感じている。そこがいい。接していて面白い。編 やなせさんって、子どもと同じような感性を持ってたのかな?雨宮 本当の正義は戦うことじゃなくて、自分の身を削ってでも、自分の顔をちぎってでも相手に何かを差し出してあげること。ずーっと子どもの目線に立ちながら、大人も共感できる本当のやさしさと強さを描き続けていたのが、やなせたかしさんなのかなぁと、今改めて思うんです。雨宮真由美さん(一番右)●笛吹市職員。かつて司書として勤めた石和図書館・一宮図書館時代に、数々の絵本イベントや絵本作家を招いての講演会などを企画。2008年、それらの活動が評価されて読売教育賞を受賞。現在、毎月第4火曜にNHK甲府の「おはなしなび」に出演。